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みず?ぶろぐ

六命ことSicx Livesのいち参加者によるだべり

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日記 最終日


 アクエス・ハイラインにとって一番大切なものは自分の命だ。
 そして、一番嫌いな人は、自分の命を大切にしない人。
 死んでしまえば、全てが終わってしまう。
 だから、真っ先に自分を庇うのは当然だ。
 それ以上のものは何もない。

 ……そう思っていた。この島に来る前までは。

 アクエス・ハイラインにとって一番大切なものは自分自身だった。



---------------------------------------------------------------------------
≪???≫

 悩みながらも、いつもの遺跡外を過ごしていた。
 外に弾き出されてしまっては、もう偽葉と戦う事は出来ない。
 今まで戦い続けてきて、誰かが戻ってきたという話は聞いた事がなかったし、
 こうして外に出ても、戻る方法が分からないからだ。
 そうなると、今の俺たちに出来ることは限られてくる。
 
 そんな時だ。強制転移によって、島の中心部に集められたのは。

 周りには知った顔がちらほら。
 ギルドの仲間は傍にいる。もちろん、ネアリカも。

 そして、榊さんの最後の演説が始まった。
 纏めると、この島を正常な姿に戻すために掃除をする、でいいのだろうか。
 水洗いという単語に引っかかったが、それがどういう意味なのかはその直後に知ることになる。

 突然、多くの探索者たちが水着姿になった。
 唖然としていると、そのまま大量の水に海まで流される。
 浮き輪のおかげで溺れる心配はないのだが、その一瞬でネアリカの姿を見失ってしまった。

 と思ったら、近くに見覚えのある白いボールさんが……。
 ま、まあ、近くにいるのなら、と少し安心した。

 
 どんぶらこ・どんぶらこと、どこかへ流されていく。
 そして、目の前にあったはずの島がどんどん沈んでいく。
 それはとても現実とは思えなかった。まるで、何かの物語を見ているよう。
 旅をした遺跡も、地底湖も、そこにあった木漏れ日も、仲間と食事をした店も、
 全てが海の底へと沈んでいった。

 その後、本当に最後になる榊さんの声が響く。
 榊さんは、遺跡にしか興味がないらしい。
 変な単語が聞こえた気もしたが、とりあえず、幸せそうだ。
 島の娘ことカエダはさておき。

 こうして、島の物語は幕を閉じた。




 そう、終わった、んだろう。いまいち実感が湧かない。
 最後まで戦いに参加出来なかったからか。
 あっけなく終わってしまったからか。
 とにかく、俺がここに来た目的の一つは達成された。

 そう思ったら、笑いが込み上げてきて、我慢出来ずに声に出して笑い始めてしまった。
 達成感なんてまったくないのに、終わっているのは確かで。
 でも、悲しいわけじゃなくて、不思議な感覚。
 いつの間にかいつもの姿に戻っていたネアリカも、俺につられて笑い始めていた。



 ……しかし、榊さんが結婚するとは。

 笑いが耐えられる程度になって、改めて榊さんの言葉を反芻した。
 ”島の娘”というものがどういうものなのか、結局理解出来なかったのだが、
 結婚できるものなのだろうか? そして、幸せな遺跡を築くらしい。
 過去の存在になったら来て欲しいと言っていた、気がする。
 それは……つまりはそういうことか。
 
 ちらりと隣にいるネアリカを見た。
 
 俺は、彼女に何をしてあげられるだろうか。
 戦いが終わって、今度こそ静かに生きる未来を選ぶ事が出来るはずだ。
 今は、過去の存在ではないのだから。

「ネアリカ」

 声を掛けると、こちらに振り返る。
 ……決して、榊さんにつられた訳ではない。うん。

「俺と結婚してください」

 その時のネアリカの反応は、俺が想像していたものとは少し違っていたけれど、
 やっぱり可愛いなあと、思ったりもした。


 
 その直後、レイが一足先に帰っていった。
 島から離れ、マナの力も薄れているため、維持出来なくなってきたようだ。
 二三日で彼から借りていた力も消えるだろう。
 彼から借りた力で成し遂げた事は多い。こちらの方がまだ達成感はあるし、感謝もしている。
 だからか、苦しまないで逝くことを少しだけ願った。叶わぬ事と知っていたけれども。

 それから、ウーゴさんの船に拾われた。
 多くの人が拾われていて、そこには金雀枝さん達もいた。
 どうやら、フォウトさんとリキュルトさんの戦闘は終っているようだ。
 落ち着いたら話そうと思っていたので、改めてネアリカとの事をいろいろと報告した。
 娘を取られた(?)父親はどういう反応をするのだろうと、少し緊張していたのだけど、
 意外とすんなり話は通った。
 というか、全然驚きもしないのはさすがに妙だと思ったので質問すると、
 すでに、ジャンニさんから聞いていた事を明かされた。




 俺がこの島に来た理由は幾つかある。

 一つ、島の最後を見ること。
 一つ、記憶にある違和感を解消すること。
 一つ、母が残した力を連れ帰ること。

 上二つはすでに達成され、残っているのは最後の一つだけだ。
 俺は初め、彼女の意識を消して、力だけにして連れ帰るつもりだった。
 そのつもりで術式を組み立て、器を用意して、この島に来た。

 ただ、彼女の力は、俺の欠けた部分の一つでもある。
 だから、俺自身がその力の器となれば、俺は少なくとも人並みに生きる事は出来るようになるはずだ。
 生命力が欠けた存在ではなく、普通に、健康体で。
 ただし、その代償は、俺自身。
 アクエス・ハイラインとして生きてきた俺の全ての記憶だ。

 俺は数日前、ネアリカに最後の質問をしていた。
 その答えを、さっき聞いた。


 ──ネアリカは、近く俺を失う未来より、まずは俺の身体が生き延びる未来を選んだ。


 それは、”俺”にとっては複雑だ。
 彼女の気持ちは解るし、選ぶ可能性があるからこそ、俺もその選択肢を彼女に出したのだが、
 実際に選ばれると、それは、30歳まで生きられないと宣告を受けた時の衝撃とは比べ物にならなかった。
 数日後には、自分は消えてしまうのだから。

 心の準備をしていたつもりだった。でも、”つもり”だけだったようだ。
 まだ、大丈夫。まだ、大丈夫と無意識に考えて、先延ばしにしていた。
 だから、今、とても恐ろしい。自分の言葉を撤回したい。
 ただ、それを口には出来ない。

 ……だって、俺はすでに決めていたのだから。
 自分の命を愛しい人に捧げるのだと。
 彼女の幸せの為に使おうと。

 ネアリカは、俺が戻る事を信じてこちらを選んだのだろう。
 その手の中には、いつの間にか荷物に紛れ込んでいた偽葉がある。
 過去を映すそれが。
 でも、俺にはそれは気休めにしか思えなかった。



 しかし、そうと決めたら、早く行動しなければならない。
 俺をここに連れてきた従姉に全てを打ち明け、両親への手紙と幾つかの品物を持っていってもらうことにした。
 その中に、俺が島で作った魔術式を書いた本がある。
 これは途中の計算をするために使ったもので、後で別の本に纏めて書くつもりだったのだが、
 もう、その時間はない。
 誰かが解読してこの術を使ってくれれば。それが俺の最後の願いだ。

 従姉は、俺を止めはしなかった。ただ、無言で抱きしめるだけだった。




 ここを発つ前に、ネアリカと結婚式を挙げた。
 ここでなら、祝ってくれる人も沢山いる。
 父親だっているし、きっと楽しめるだろう。

 ……俺の記憶にも残りやすいだろう。
 本当にそうなればいいのに。
 
 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。




 死を常に意識していた俺は、近く起こり得る未来を幾つか想像してきた。

 ネアリカを失ったら俺はどうなるのだろう。生きていけるのだろうか。

 ただ、実際に起きる可能性が高いのは、その逆で、俺が先に死んでしまう方だろう。
 そんな時は、決まって俺はこう考えていた。
 ネアリカには生きて欲しい。
 誰か別の男を好きになってもいい。だから、俺の事は心の片隅に置いて、生きて欲しいと。

 よく考えれば、今の状況はまさにそれだ。
 予想より少しだけそれが早くなっただけ。
 そう思うと、気持ちが楽になった気がした。
  



 力を受ける儀式は、ギリギリまで遅らせた。
 俺自身の手で行うため、動揺して間違えたら、それこそ大惨事だ。
 
 力を受ければ、身体が再構築される。
 そして、俺は俺でなくなる。
 だから、多分、記憶は戻らないだろう。
 そこには、俺の二十年は残らないのだから。

 でも、せめて、どこかにネアリカへの想いだけは残って欲しい。
 そして、新しいアクエスとネアリカが幸せになれば、それで俺は報われる。
 後悔はしてない。まだ、恐ろしいけど。怖いけど、これでよかったんだと思う。
 何も残せず死んでしまうよりはマシだ。ネアリカに希望は残せるのだから。




「忘れても、いいよ。私が覚えてるから。あなたが……思い出してくれるまで。ずっと」

 俺は最後まで笑顔でいられただろうか?







(偽葉に俺の記憶は留まるのか。偽葉は所詮末端。
 本体はもう海の中に沈んでいるというのに。
 それでも想いが力になるのなら…………どうか俺の願いを)

 …………。

「じゃあ、始めようか、ヴィンセルス」
 

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